だいたい、感じてなんぼ

人生、自分の感じたものがすべて。あらがわず、しなやかに。

『さがしものをさがして』

『さがしものをさがして。』

※この作品を、ケイゴルバチョップさんに贈ります。

 

 

 

 

 


「大地」は、大地が生み出した生命とエネルギーを交わし、命を育む。

 

「星」はひかりを生み出し、永遠とも思わせるその輝きは、あらゆる生命の道しるべとなり、宇宙と大地を繋ぐ。

 

「雲」は海と大地を結び、大地に雨を降らしては、海へ空へと巡っていく。

 

人はその「惑星」に生かされ、人は人とのつながりの中で生命を紡ぎ、天と地を結ぶ。

 

人から人へ、また過去から現在へと想いは巡り、そしていずれカラダは大地へ、魂は天へと還り、また巡る。

 


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ここは美しい惑星。巡らないものなんてないこの星で、ケイゴはもう十分に年を取ってしまっていました。ところどころ毛は白く、肌はよく日に焼けていました。身体は丈夫なものの、疲れは昔ほど簡単には取れなくなっていました。

ケイゴはいつも「さがしもの」をしながらこの惑星を巡っていました。

 

ケイゴは賢いので、人々に役立つたくさんの「方法」や「しくみ」、そして「法則」を知っていました。

たくさんあるゴマを一瞬で数える方法、ドロボウの心のこと、なぞなぞパンの作り方、慈悲深いゾウの心、シマウマはどうやってシマシマになるのかも・・・。

そして、【この世のものは、何もかもが巡っていく】という「法則」も、ケイゴは知っていました。 


ケイゴはいつからかいろんな街を巡っては、それらの「方法」や「法則」を必要とする人に教えました。その代わりに、人々からお礼として心の中にある「おくりもの」を受け取ってきました。それは、時に「モノ」だったり、感謝の「キモチ」だったり、新しい「法則」や「方法」だったりもしました。

 

ケイゴの「さがしもの」は、いつもその誰かのおくりものの中にありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


私は「さがしもの」をしている。

私のさがしているものはいつも誰かが持っていて、ちゃんとそれを手に入れることができる。だけど、それが見つかるや否や、また新しい「さがしもの」をし初めてしまう。

まるでその見つかった「さがしもの」は、自分の本当のほしいものじゃなかったかのように。そして、なにもせず、ジッとしているとどこか心が穏やかではなくなってしまう。

 

だから、この「さがしもの」をはじめてから、もうかれこれ数十年になる。


でも、今さがしているものこそ、きっとこれが私の本当の「さがしもの」で、それをどこかのだれかが持っているに違いない…それが見つかれば、きっと私の「さがしもの」も終えられる。

 

 


ケイゴはそう願って、今日も彼を求める人の場所へと、訪れてゆく。

 

 

 

 

 

 


今日たどり着いたのは、貧しいボロボロのおうち。

お腹をグゥグゥ空かせた家族が住んでいました。その家に住んでいる家族にケイゴは、動物の捕まえ方を教えました。

ケイゴはその家族に、とても感謝されました。そしてその家の父はケイゴにこう言いました。

「あなたは、なんでも知っていてなんでも持っているように見える。あなたはなんのために旅をするのだね?」

ケイゴ「私は、旅人ではありません。私はただ、答えを、、「真実」をさがしてるんです。でも、どうやらここにはないみたいだ。」


ケイゴのさがしものはここでは見つかりませんでしたが、その家の父から別の「おくりもの」を受け取り、手を振って別れを告げました。

 

 

 


その帰り道、隣町へ歩く途中に大きな大きな森がありました。森はケイゴに語りかけました。

 

「さがしものは、本当にそれかい?」

 

ケイゴ「あぁ、そうだとも。それさえ見つかれば、きっと「さがしもの」を終えられる。」


森「人は、君の鏡。君の目に映る誰か寂しさは、君の寂しさなのかもしれないね。」


ケイゴ「それは、どういうことなのだろう・・・。もしかして、私の本当の「さがしもの」はこれではないのだろうか?」

 

 

ぐるぐると考えながら、森を後にしました。

 

 

 

 

 

 

 


次の日にたどり着いたのは、病に伏した母親のいるお家。

その家に住むその母親の息子に、ケイゴは病気を治す薬草を教えました。

ケイゴはその家族に、とても感謝されました。そしてその家の息子はケイゴにこう言いました。

「あなたは、なんでも知っていてなんでも持っているように見える。でも、あなたはなんのために、旅をするの?」

ケイゴ「私は、旅人ではありません。私は、本当のあなたを・・・いや、本当の「じぶん」を探してるんだ。でも、ここには私の求めているものはないみたいだ。」

 

ケイゴのさがしものはここでは見つかりませんでしたが、母親の息子から別の「おくりもの」を受け取り、手を振って別れを告げました。

 

 

 

 

 

 


その日の帰り道、草むらに美しく咲く花がありました。花はケイゴに語りかけました。

 

「さがしものは、本当にそれなの?」

 

ケイゴ「あぁ、そうだとも。それさえ見つかれば、きっと「さがしもの」を終えられる。」

花「あなたは誰かの「流れ」に流されているのかもしれないわね。」

ケイゴ「それは、どういうことなのだろう・・・。もしかして、私の本当の「さがしもの」はこれではないのだろうか?」

 


ぐるぐると考えながら、その花を後にしました。

 

 

 

 

 

 

次の日にたどり着いたのは、また隣町のペットを亡くして傷ついた少年の住む家。

ケイゴはその傷ついた少年に、この世とあの世のやさしい仕組みを教えました。

ケイゴはその少年に、とても感謝されました。そして少年はケイゴにこう言いました。

「あなたは、なんでも知っていてなんでも持っているように見える。あなたはなんのために、旅をするの?」

ケイゴ「私は、旅人ではないよ。私は、やさしさを・・・いや、「愛の法則」を探してるんだよ。でも、ここには真新しいものはないみたいだ。」

 

 

 

ケイゴのさがしものはここでは見つかりませんでしたが、その少年から別の「おくりもの」を受け取り、手を振って別れを告げました。

 

 

 

 

 

その日の帰り道、満点の星空が広がっていました。星はケイゴに語りかけました。

 

「さがしものは、本当にそれかい?」

 

ケイゴ「あぁ、そうだとも。それさえ見つかれば、きっと「さがしもの」を終えられる。」


星「本当にそうかな?もしかして君は、ただ「さがしもの」をさがしてるんじゃないのかい?」

 


ケイゴ「星よ、何を言うのだ。私は人に「方法」や「しくみ」を教える代わりに、私は私の「さがしもの」を見つけることができるんだ。そしたらきっと「さがしもの」を終えられるはずなんだ。私はそう信じている。」


星「だから「さがしもの」をしているのかい?君がこの星を巡っている本当の理由は、別にあるように見える。」


ケイゴ「どういう意味だ・・・?」


星「君が本当にさがしているのは、君の「かえる場所」ではないのか?」


ケイゴ「かえる場所なら、いくらでもある!大きな家も、キラキラの家も、ホカホカの家だってあるんだ!」


星「そこは・・・君の本当にかえりたい場所なのかい?本当の意味で何かを巡り巡らせ続けるには、心の底から望む「かえる場所」が必要なのさ。それは、実態のない家、つまり、こころのお家のようなもののことさ。

 

君は、身軽だ。そして、やさしいし、賢い。心のしくみもたくさん知っている。しかし、君は君が思う以上に、深い悲しみの荷物を背負っているようだね。他人の心ばかりに気を取られたのか、自分の心を見ないようにしているのかはさておき、どうやらその「悲しみ」が、君の帰る場所を隠してしまっているようだ。

君は、その荷物に触れるのが恐ろしいと思っている。だから、そこから目を逸らすように誰かの荷物を軽くすることばかり考えて、君の深い記憶の底にある荷物を放ったままにしているようだ。


あらゆる過去の記憶は感情と共に、現在に向かって巡り続ける。悲しみは悲しみのまま、喜びは喜びのまま時間を超えて巡り続ける。君はきっと、心に悲しみが巡る度に、自分の悲しみの荷物の存在に気がついているはずだ。 君は、いつか誰かが、その悲しみの荷物をどかしてくれること・・・自然と癒してくれることをどこかで望みながら、その「さがしもの」をさがし続けているんじゃないか?

 


ケイゴ「・・・。わからない。でも、私は私を必要としている人の為に・・・ただ誰かのためになりたいと思っているのだ。それは、自分のためでもある。それにもし、僕の本当のかえる場所が見つかってしまったら、もうそこに留まり続けて、こうやって巡ることはできなくなるかもしれない。それが、恐ろしいんだ。」


星「留まる必要なんてない。かといって、巡り続ける必要もないんだ。1番大切なのは、いつだって、そうしても、そうしなくてもどちらでもよいという、自由さであり、自然な状態ではないのかい?

 

ケイゴ「・・・。」


星「全てのものが巡り続けられるのは、いつだって大切な巡る場所(かえる場所)があるからだ。雲や星、海、この惑星の全てに巡る場所(かえる場所)があるように、人のこころにもそれが必要なんだ。

君は、もうそれを十分探してきた。だけどその「さがしもの」は外にはない。さぁ、私と共に、君の「かえる場所」を探しに行こう。」

 

ケイゴ「もう随分昔の話だ。もう「かえる場所」も「かえりたい場所」も、どこなのか覚えていない。大切な記憶も悲しみの記憶だって忘れてしまった。遥か昔に、皆死んでしまった・・・。全てなくなってしまったんだ。」

 

 

星「大丈夫、記憶に時間は関係ないんだ。

さぁ、記憶のなかへ。星が導こう。」

 

 

 

星はそう告げると、星は煌煌と輝き始め、ケイゴを明るく照らしました。

そして星を浮き彫りにするように暗かった空の色は、みるみるうちに明るくなり、太陽や月、星の動きはまるで逆回しに回り始めました。

空の動きは徐々に早まり、それに伴って街の風景は過去に遡るように更地に戻っていき、山の木々はどんどん若く、実や花は蕾へと戻ってゆく。それはまるで季節が逆回転しているようでした。


時間と共に巡ることとは真逆の景色に圧倒されているのもつかの間、星はケイゴを過去の記憶へと導き始めました。

 

ケイゴの心の中の記憶が縦横無尽に、次々と蘇っていきました。

 


今まで巡り続けた場所や景色、あらゆる人々。歩いた道、聞こえる音や温度感のある人の声、あの場所のにおい、人と触れた感触・・・まるで今目の前で体験しているような感覚へ。

 

そして息を吹き返すように心に蘇る、たくさんの悲しい記憶、寂しい記憶。

 

耐え難い苦しみや大切な人との別れ、そして消えてしまいたくなるほどのケイゴを傷つける理不尽さや、心ない数々の言葉たち。

 

追体験するような孤独感はケイゴから生命力を奪うかのように、心を蝕み始めました。

 

抵抗する間も無く、蓋をしていたはずの悲しい気持ちが、溢れ出すように心を侵食していき、ケイゴは胸が張り裂けそうになりました。

 

 

 

あまりの苦しさに、思わずその記憶から目を逸らし、心を閉ざそうとしたケイゴに、星はこう言いました。

 

 

「愛のない悲しみの記憶」などこの世には存在しない。全ては「ただ自分が愛したいように愛することのできなかった記憶である。」と。

 

 

それを聞いたケイゴは、時を越えて、その悲しみの記憶を見つめ、そして抱きしめました。

 

するとその悲しみの記憶は、徐々に色彩を取り戻して行くかのように温かみを帯びていきました。

そして悲しみを帯びた記憶は、次々と光に変わっていきました。

 

悲しみの記憶が現れては、まるで自分自身に謝っていくかように、涙しながらケイゴは丁寧に記憶を抱きしめ続けました。

 

 

 

そうしていくうちに、ついにケイゴの抱えていた悲しみの荷物はすべえ消えていきました。

 

 

ケイゴ「もしかしたら、私には「さがしもの」なんて、何もなかったのかもしれない・・・。」

 

 

 

 

 

ケイゴは星に導かれるまま空中に浮かぶようにして、身も心も星に委ね続けました。そして最後に辿り着いたのは、まだ物心ついたばかりの、小さな頃のケイゴの記憶。

 

 

ケイゴの眼に映るのは、あたたかい光の灯る、懐かしい佇まいの家。

 

ケイゴの好物のニオイがする、テーブルに並ぶあったかいごはんたち。

 

ずっと抱きつきたかった、やさしいあの人の背中。

 

そして、聞こえて来たのはずっとずっと、もう一度聞きたかった、あの言葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私のさがしもの、「かえる場所」。

人は己の中で心を巡らせ、そしてまた、人へ人へと巡ってゆく。

 

 

 

 

 

 


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義務感、受け取れないもの、悲しい記憶、帰る場所(居場所)、宇宙、星